Live at Concordo
FONTE
1 Samambaia (Cesar Camargo Mariano)
2 Brigas Nunca Mais (Antonio Carlos Jobim)
3 O Coco do Coco (Guinga)
4 Sampa (Caetano Veloso)
5 Cataplana (Kazuhiko Obata)
6 Casa Forte (Edu Lobo)
7 Carinhoso (Pixinguinha)
8 Loro (Egberto Gismonti)
9 Passadouro (Kazuhiko Obata)
10 JABRA (Guennoshin Yasui)
11- On Wings of Song (Felix Mendelssohn / Arr. Masahiko Satoh) -Stereo Only 11+ Chovendo na Roseira (Antonio Carlos Jobim) +Surround Only
Flute: Masami Nakagawa
Guitar: Kazuhiko Obata
Percussion: Gennoshin Yasui
Produced by Seigen Ono for Saidera Records
Co-Produced by Gennoshin Yasui
Recorded LIVE at Corcovado, Tokyo, August 28, 2004
Direct to Genex GX-8500 DSD with EMM ADA8
Mixed by Seigen Ono at Saidera Mastering, Tokyo
Mixed and mastered on to Sony Sonoma DSD Audio Work Station
Special thanks to “Corcovado”, Yoshiki and Regina Iijima
Filo Machado (Our Brother), Marcos Suzano, Maria Luiza
クラシックはもとよりジャズ界でも大活躍の世界的フルート奏者” 中川昌三”、多彩かつグルーヴィーなギターで大人気の”小畑和彦”、ブラジルでも活躍するパーカションの鬼才”安井源之新”、3人が奏でる驚異のインストゥルメンタル・ミュージックグループがFONTE(フォ ンチ)である。 FONTEとはポルトガル語で「泉」。3人の「音の泉」からは、波間に漂うボサノバから光と闇が煌くジャングル迄、ブラジル音楽を素材にはするものの、ジャンルを超え、昇華された前人未踏の「FONTEとしての音」が汲み出される。このグループの結成経緯であるが、源之新がブラジルを拠点に活動していた時に、20年の親交があった中川昌三が遊びにやって来ることとなった。「折角だからコンサートを開こう」と、源之新がよく共演していたFilo Machado(Vo&G)を含めた3人でサンパウロのインストゥルメンタル音楽の殿堂(SESC SAO PAULO)で演奏したことに始まる。2度の渡伯で、サンバ、ボサノバだけでない豊かなブラジル音楽の洗礼を浴びた中川と、最近帰国した源之新は、ブラジル音楽を含む幅広い音楽性を持つ超絶ギタリストを求め、名手小畑を呼び込みFONTEが結成されるに至る。 FONTEとブラジル音楽との関係は、自分達の音をブラジル音楽というフィルターを通して良い意味で「あそぶ・ひろげる」ということであり、「ブラジル音楽そのもの」を演奏しているという意識はなく、 それが目的でもない。演奏が始まるとジャンルという概念は消し飛び、 あくまでも自然体で音が紡ぎ出されていく。これこそ物真似や「何々風」でない真の意味での「日本から生まれるワールドミュージック」 であり、又、刻々と変化するその音は、ライブでこそ真価を発揮する「情況の音楽」だ。各々がリーダーとしても活躍している3人は、時には融和し合い、時には激しいバトルを繰り広げながら、このトリオで更なる可能性を拡げている。超絶技巧を持つこの3人の演奏を聴いていると、フルート、ギター、パンデイロってこんなに簡単な楽器だったか?との錯覚にはまってしまう。 何よりも幸せなのは、メンバー各々が本当に自ら楽しんで演奏して いることがそのままストレートに伝わってくることである。大変難解な曲を演奏しているのに、決して内省化することなく、音を楽しみ、それを観客と分かち合おうというキモチが伝わってくるのである。 癒しあり、驚きあり、興奮あり、脱力あり(笑)、とめどなく拡がり進化していくFONTEの世界をあなたも体験して欲しい。
中川昌三(フルート) Masami Nakagawa:言わずと知れたボーダーレスフルート奏者。クラシックとジャズの双方の分野においてトップフルーティストとして縦横無尽に吹きまくる。既に15枚のCDをリリース、参加アルバムはGil EvansオーケストラからJ-POPまで無数。常に新たなる挑戦を行い、フルートという楽器の領域を拡げている。他方では、30年の間芸大の講師を勤めあげ、 現在は桐朋短大講師を勤める。 一口にフルートと言っても、バスからピッコロまで様々な種類があ るが、その全てを吹き分けて各々を鳴らしきるのは至難の業である。 このCDでは、コンサート(ノーマル)フルート、ピッコロ、アルトフルー トが登場する。各種フルートの吹き分けはもとより、一聴して中川だと分かる際立った音色の中に、実に多彩な「表現」を聴くことが出来る。明るさ暗さ、奥行き(音を手前で響かせたり遠くで響かせたり、これを味わえるのがまさにサラウンドの醍醐味)、息遣い、艶から枯淡、更に、声とのMIX、2つの音を一度に出す多重奏法、果ては循環呼吸(鼻から息を吸い続ける一方で口から空気を出し、途切れなく音を出す技術)・・・。フルートってここまで出来るのか?という驚きを禁じえない。
小畑和彦(ギター)Kazuhiko Obata:ブラジル音楽界のみならずギター界のファーストコール。ジャズ、 ブルース、ロック等幅広い音楽性をバックボーンに、斬新なアプローチでサウンドを変化させる音の魔術師。ベース不在のFONTEでは、唯一のコード楽器であるギター1本で全体のサウンドを支える。多数のCDに参加し、リーダーアルバムも4枚。作曲家としてもFONTEを支えている。 本CDでは、CataplanaとPasadouroが小畑のオリジナルであるが、ありきたりのボサノバやサンバだけではない、ブラジル音楽の豊穣な土壌から生まれた豊かなハーモニーを受け継いだ傑作と言える。ボサノバの定番であるガット弦をあえて使用せず、鉄弦を張ったアコースティッ クギターを奏でる。その繊細で暖かく美しい音色が全体を包むかと思うと、ディレイ・サンプリングを駆使しながら、時にはスキャットを 交え過激に音を紡ぐ。SACDでお聴きの方には実感して頂けると思うが、確かな技術が無ければこれほど濁りのない澄み切った音は出せない。ギター1本でベースラインをもカバーし、ソロも取りながらバンドを盛り立て支えるということは実は大変困難なのだが、音の「引 き出し」の豊富さでFONTEのサウンドを織り出していく、その職人技を堪能していただきたい。
安井源之新(パーカッション)Guennoshin Yasui打楽器のみならずVoiceも交えたそのパフォーマンスは、パーカッショ ンというよりも”安井源之新”という”楽器”と形容しても良い。内外の幅広いジャンルのCDに参加、Filo Machadoや Marcos Suzano等とのコラボレーションで知られる。ブラジルでもトップアーティストとして活躍するが、今般帰国、旋風を巻き起こしている。タガの外れたアーティストに特に好まれている。 FONTEでは、主にチンバとパンデイロという楽器を中心に自由且つ安定したノリでリズムを支え、同時に独特の音程感による低音でベー スの役割も担う。パーカッションの音をギターの低音にシンクロさせる技を持つ奏者は少ない。チンバとは、片側に皮が張られた長い筒状 の楽器。横にした胴体を足の下に挟み、左手は素手で皮を、右手はブラシで胴体あるいはシンバルを叩く。左手でオープンやミュート操作を行い、バスドラムとは異なった柔らかな低音でサウンドのボトムを創る。パンデイロとは、タンバリンの一種であるが、右手指・掌全体と左手の振りで極限まで速いリズムを叩き出し、なおかつ左親指での低音ピッチ変換を行う。小さな楽器一個とはとても思えない多彩な音を叩き出す源之新は、日本では並ぶものは無く世界でも第一人者として知られている。指1本で音を鳴らし続けるトレモロの技やトレードマークである肘打ちなどのパフォーマンスをCDでは見ることが出来ないのは実に残念である。