Bar del Mattatoio
Seigen Ono
01. Vida Boa
02. Bar del Mattatoio
03. Covenant of the Rainbow
04. I Do Love You a Little
05. Suzuki-Sensei-Sansei
06. Gol de Placa (Copa 94)
07. I Am a Good Fish
08. Nick & Kiriko
09. Reached Moon Tower
10. Fernando de Noronha
11. Monica Tornera Domenica Sera
12. Genova
13. It’s So Far to Go
All compositions written and arranged by Seigen Ono
Lyrics for "Gol de Placa (Copa 94)" written by Matinas Suzuki Jr.
Art direction and design by Tsuguya Inoue for Beans
Recorded and mixed between September 1988 and June 1994 at Master Sound Astria, Battery Studios, Sound On Sound, Sorcerer Sound (New York) Impressao Digital, Barra de Copacabana (Rio de Janeiro), Green Studio (Milan) Be Bop, Trans America (Sao Paulo), Onkio Haus, Saidera Studio (Tokyo) Studio, Ferber, Studio Harryson (Paris)
Coordination by Barbara Waren Pace, Jennifer Weiner (New York) Lambert Boudier (Paris); Monica Ramos for Deck Produçoes Artisticas (Rio de Janeiro)
Special thanks to: Caetano Veloso, Arto Lindsay, Greg Calbi, Tom Lazarus, Tomohiro Ohya (Onkio Haus) Michinori Nagano, David Sylvian, Richard Chadwick, Keiji Taguchi (Brasserie D), Keïko Courdy, Tadeu Jungle & Iris, Lúcia Nagib, Lois Lerner, Sue Jacobs, Denise Piccinini, Matinas Suzuki Jr., Bia Lessa, Jota Moraes, Monica Paparcone, Franca Soncini, Emanuel Ginepro, Henry Alekan
Alfredo Pedernera: Bandoneon / Roy Nathanson: Soprano sax / Romero Lubamba: Guitar / Cyro Baptista: Percussion / Jill Jaffe: Viola Arto Lindsay: Guitar / Marc Ribot: Guitar / Seigen Ono: Piano / Denise Piccinini: ta ta ta ta ta bom! bom! vida boa!
02. Bar del Mattatoio
Toninho Ferragucci: Accordion / João Parahyba: Timba / Mane Şilveira: Alto sax / Roberto Sion: Soprano sax / Maxine Neuman: Cello
03. Covenant of the Rainbow
Alfredo Pedernera: Bandoneon / Roy Nathanson: Soprano sax / Marc Ribot: Guitar / Jill Jaffe: Viola
04. I Do Love You a Little
John Zorn: Alto sax / Bob Stewart: Tuba / Bobby Previte: Brush, percussion / Marc Ribot: Guitar / Jill Jaffe: Viola, violin / Maxine Neuman: Cello / Recorded by Tom Lazarus
05. Suzuki-Sensei-Sansei
Tatiana and Vali: vocals / Alain "Loy" Ehrlich: marimba, bass, tambourine / Seigen Ono: guitars, piano / Matinas Suzuki Jr.: Folha de S.Paulo, Brasil
06. Gol de Placa
Kika and Aline: Vocals / Marcio Lott, Chico Pupo, Ronald, Keïo Courdy: Chorus / Jurim Moreira: Drums / Jamil Joanes: Bass / Jota Moraes: Keyboards / Cláudio Jorge: Guitar / Gordinho: Surudo / Pirulito: Percussion / Ovidio: Percussion / Newton da Silva, Francisco Oliveira: Trumpets / Roberto Marques: Trombone / Seigen Ono: Guitars / Toninho Ferragucci: Accordion
07. I Am a Good Fish
Téo Lima: Drums / Sizão Machado: Bass / Jonathan Drew Zingg: Guitar / Aline: Vocals / Ovidio: Pandeiro / Pirulito: Congas, shaker / Gordinho: Cowbell Jota Moraes: Keyboards / Mauro Senise: Alto sax / Daniel Rosa: Tenor sax / Newton da Silva, Francisco Oliveira: Trumpets / Roberto Marques: Trombone Jill Jaffe: Viola / Cláudio Jorge: Guitar / Seigen Ono: 12 Str Guitar, keyboards / Horn Arrangment by Jota Moraes
08. Nick & Kiriko
Alfredo Pedernera: Bandoneon / Roy Nathanson: Soprano sax / Arto Lindsay: Guitar / Cyro Baptista: Percussion / Romero Lubamba: Guitar / Marc Ribot: Guitar / Jill Jaffe: Viola / Evelyne Bennu: Vocals
09. Reached Moon Tower
John Zorn: Alto sax / Hirotaka Izumi: Piano / Seigen Ono: Guitars, balaphone / Recorded by Yasuo Morimoto / Hirotaka Izumi appears courtesy of Sony Records
10. Fernando de Noronha
Roberto Sion: Soprano sax / João Parahyba: Timba / Norma H. Rodrigues: Harp / Horácio Schaeffer: Viola / Betina Stegman: Violin / Sérgio: Cello
11. Monica Tornera Domenica Sera
Seigen Ono: Charango, balaphone / Jill Jaffe: Viola, violin / Maxine Neuman: Cello / Alfredo Pedernera: Bandoneon / John Beal: Contra bass / Carol Emanuel: Harp / Less Scott: Flute, piccolo / Recorded and Mixed by Tom Lazarus
12. Genova *
Seigen Ono: SD-900, D-50
13. It’s So Far to Go *
dedicated to Aki Ikuta
Seigen Ono: Charango, percussion, S-900, D-50
Liner Note: Caetano Veloso, (English traslation by Arto Lindsay)
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「バ-・デル・マタトイオ(屠殺場酒場)」を聴くこと、それはユニ-クな体験だ。オノセイゲンはただちに私たちを人間的でまた地理的な風景の中へ運んでくれる。官能と甘さとメランコリ-のあふれる風景へ。生活の強烈な楽しさと、生活をうまくまとめていけないことがわかったときのあいまいな悲しみ、そのふたつのブレンド - - - ブラジル人ならたぶんわかるだろうが - - - がここでは稀にみる詩的な力で捉えられている。
フェリ-ニの映画にありそうなセンチメンタルなメロディ-は、聴かれるというより思い出される。このメロディ-は海から現れ、砂浜やアスファルトや歩道に広がる群衆を通り抜け、リオ・デ・ジャネイロの街のために太陽がもえている青空へと抜けてゆく。しかしここで大切なのはさまざまな声のサウンド、波、ここで述べたことから沸き上がってきた視覚的な印象ではない。フレ-ズやノイズはあたかも見えない映像でできた映画のサントラであるかのようには聞こえてこない。私たちを驚かせるのはサウンドのパワ-の理解である。
物売りの声、電話の会話、波の極めて微妙なミックスは完全にアコ-ディオン、サックス、ヴァイオリンの音色の選択に力を貸している。ひとつのテ-マが何度も繰り返され - - - キュ-バのボレロとブラジル北東部のトア-ダ(民謡)- - そのセンチメンタルな変奏はアルバム全体を通してちりばめられた甘いアイロニ-をかもしだす。そのために少しあとで、ゆかいなチュ-バがベ-スになって、おどけ者のヴァイオリンとふざけあうときに、私たちがただちにそのすべてが懐かしさ - - - 何に対する懐かしさなのかはわからないのだが - - - のフィルタ-を通して聞こえてくるように感じるのだ。
音楽とこうしたサウンドは世界や娯楽や音楽の概念を通して私たちのもとへやってくるのだ。音楽はつねに聞こえてくる構成物を越えたもの、ほかの場所にあるものなのだ。二-ノ・ロ-タや小津映画のサントラのことを考えればよい。そのあと、コンガ、ベ-ス、ファンキ-なホ-ンの曲では、ギタ-とサックスの即興が聞こえてくるのだが、ありきたりのジャズ・フュ-ジョンを聞いているような感じはしない。そうではなく、ジャズ・フェスティバルをやっている最中のヨ-ロッパの小さな町のホテルにいて、広場でやっているバンドが聞こえてくる、そんな自分を簡単に想像できるだろう。ヴァイオリンはただコメントと気持ちの喚起がここでは一番大事なことなんだと確認するにすぎない。
私たちにこのような印象を与えるのは単にミックスや演奏のせいではない。スタイルの「モンタ-ジュ」のテクニックが、時にたった一節の中にさえコントラストを与えるのだ。そして批判的な考えを生み出したり、実際には聞こえていないがそこに実在してもよいようなほかの音楽やサウンドへの記憶へと私たちを導いたりする。ほかの曲ではフランスの子どもたちの話声や歌声がノイズから立ち現れ音楽となる。そして優美なリズムとほぼメロディ-の話声が互いに絡み合ってひとつのメッセ-ジ(レコ-ドのすべての登場人物と妄想のメッセ-ジ)が生まれる。そのメッセンジャ-は子どもたちなのだ。たぶんもうひとつのメッセ-ジはタンゴにある。実はこれはサンバであり実はこれは私たちをあれやこれやの思いにいたらせる悲しみと幸せを運ぶ遊びなのだ。別の曲にあるバイ-アの街の通りのパ-カッションのサウンドは他の曲とは異なる。とても離れているのに、理性と純粋な心のまじりあった処理をされている。たぶんこの調和はこのアルバム全体を説明しているかもしれない。理性の洗練と心の純粋性。すべては - - - ブラジルがあふれているにもかかわらず- - - が日本のタッチだ。
シロフォン、ヴィブラフォンとピアノのコンビネ-ション、甘すぎるキャンディ-のように西洋的でもある旋律の合間に現れる東洋的な音程。無邪気なようにみえる知識。真実の無垢。不思議なしとやかさと不思議な大胆さ。「バ-・デル・マタトイオ」は独創的なオブジェだ。
94年10月、リオ・デ・ジャネイロ|カエタノ・ヴェロ-ゾ(和訳:細川周平)
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* track 12 and 13 used for "Mobili sotto luci da film" Affascinante percorso tra pezzi d'arredamento al Mattatoio (Pallucco). Luci: Henry Alekan, Musica; Seigen Ono / Mattatoio Milano Via Lobbroso 53. 14/19 settembro 1988
1988年9月14日 ミラノ(イタリア)
照明: アンリ・アルカン
音楽: オノ セイゲン
写真: ピーター・リンドバーグ
[光と影と音楽と ]
時は1988年。私はミラノのデザインアカデミーの学生だった。30名しかいないクラスの平均年齢は28歳という異色なアカデミーで、イタリア人はたった2人のみ。英米をはじめ、フランス、ドイツ、スペイン、ポルトガル、ベルギー、ブラジル、メキシコ、タイ、そして日本など、世界各国から来た学生たちが議論を交わす刺激的な毎日だった。
その日、クラス全員が家具見本市(現ミラノ・サローネ)を見てまわっていた。今の若い人には想像できないだろうが、スマホどころか携帯電話さえもない当時、情報はSNSではなく口伝えで広まるものだった。クラスメイトと、「どこそこの展示がすごいぞ」などと互いに情報交換していた。
そろそろ足も疲れてきた夕方、すれ違ったクラスメイトたちが、興奮気味に言った。屠殺場跡地ですごいものを見たと。それは、イタリアのある家具メーカーのイベントだった。
私とクラスメイト数人は、ミラノ郊外の、なにも無いだだっ広い草っ原にある屠殺場の廃墟に向かった。辺りはすでに真っ暗で、人も少なく、襲われたら一貫の終わりという不穏な空気が漂っていた。
しかし、近づいてみると、それはただの廃墟ではなかった。崩れかかった煉瓦造りの建物を、巨大なスポットライトが外から中に向かって照らしていたのである。
私たちは中に足を踏み入れ、一瞬にして異次元に飛んだ。
まるで太陽がそこにあるように、大きな穴の向こうから、強烈な光が差し込んでいた。殺伐とした空間で主人公さながらに照らされていたのは、たったひとつのねじれた家具だ。光は、ざらざらしたコンクリートの床に長い影を作っていた。
そして、音楽が流れていた。ゆったりとして、少しノスタルジックで、少し未来的で、少し複雑な、メロディがあるのか無いのかわからない心地よい音楽が、重なる弦の音が、空間を完全に支配していた。私は部屋の端の床の上によろよろと座り込み、光と影のあいだを漂う音楽に身を委ねた。
クラスメイトたちの誰ひとり、声を出さなかった。ただ、驚愕していた。なんなんだこれは。たがいに目を合わせ、言わずともわかるこの感覚を共有した。
まちがいなく、人生で最も衝撃を受けたイベントだった。しかもアートではなく、家具の展示会のはずだ。家具が、こんなにも衝撃を与えることができるのか?誰もがそう自問した。
しばらく呆然としていた私は、どうしても音楽家の名前を知りたくなった。そしてそれぞれの部屋を見てまわり、やがて関係者のいる細長い机を見つけた。そこに、アジア系の若い男性がいた。私はイタリア語で訊いた。この音楽は誰のでしょうか?と。
すると、私の顔を見たその人がこう言った。「もしかして、日本人の方ですか?」
頷くと、彼はにっこり笑ってこう言ったのだ。
「ぼくは10日ほど前にここに来てこの音楽を作りました。12絃ギターで演奏したんですよ」※
その人こそが、オノ セイゲンだった。ラッキーなことに、私はご本人と対面してしまったのだ。私はその時彼に何を言ったかよく覚えていないが、絶賛したことだけは覚えている。もし日本に行くことがあったら、ぜひあなたのコンサートに行きたい、とかなんとか言ったかもしれない。私も彼もまだ20代の頃だった。
それ以来、オノ セイゲンとは細くて長いお付き合いをさせてもらっている。
今では数年に一度会うだけだが、会えば必ずこの時の話が出る。それほど、当時ミラノにいたクリエイターや学生みんなの心を揺るがした都市伝説的なイベントだったのだ。
あのイベント以降、私はジェットコースターのように上へ下へ、また重い病気になったりという波瀾万丈な人生を送り、気がつけば物書きになっていた。「作家になりたい」などという野望はなく、ただ「物語を書きたい」が重なり、無我夢中で書いていたら、50冊ぐらいの著作を持つようになっていた。その多くは中高生向けのYAと呼ばれる分野の小説だが、小学生向けの児童文学や、新聞連載、大人向けのエッセイなど、いつの間にかデザインから物書きに完全にシフトしていた。
あれほど熱意を持っていたデザインへの情熱はいつしか消えていた。病床で、一冊の本は人を救えるかもしれないが、一脚の椅子にはそれができない、という限界に気がついてしまったからかもしれない。美は世界を救う、と尊敬する建築家レンゾ・ピアノはよく言っていた。確かにそれは嘘ではないかもしれない。しかし翌年はもうこの世にいないかもしれないと覚悟した私には、建物や家具の美より、文章や音楽のザワザワの方が心に響いた。言葉や旋律は自分の中に入ってきて、精神に多大なる影響を与えた。健康をとり戻した今も、それは変わらない。
あの屠殺場に展示されていた家具そのものは私の人生を1ミリも変えなかったが、あの時のオノ セイゲン音楽とアンリ・アルカンの光は、確かに私の人生の一部分を大きく照らした。
佐藤まどか
イタリア在住。主な著作に『一〇五度』『アドリブ』(両方ともあすなろ書房)、『スネークダンス』(小学館)など。新作は10月発売の『雨の日が好きな人』(講談社)。
http://www.madoka-sato.com
追記:オノ セイゲン 2022/09/13@ローマ
そうだった。忘れてた記憶をいろいろ思い出した。佐藤まどかさんは、あのマジカルな空間の証人である。太陽光のような光の下では、ジャン・コクトー「美女と野獣」の白黒フィルムの中に飛び込んだように何もかもが美しく見えた。東京からミラノに機材や楽器、12弦ギターやAkai S1100 samplerも持ち込んだ。まず、ここ(1970年頃に閉鎖された屠殺場跡地=Mattatoio)につれてこられて、アンリ・アルカンの映画照明をセッティングから見て。ホテルではなくエージェントのスタッフ、モニカさんのアパートを借りて滞在していた。そこで最初に覚えたイタリア語のフレーズは、曲にもなってるんだが、”Monica Tornera Domenica Sera”(Monica will be back on Sunday Evening) 近くの教会を夜借りたり、録音スタジオにも通い、1週間ほどで作曲・制作した。ぼくのアルバム『Bar del Mattatoio』に入ってる「Genova」「It’s So Far to Go」、及び『NekonoTopia NekonoMania』に入ってる「 BERLINER NÄCHTE part-1〜4。ちなみにこのイタリアのエージェントは、87年9月、初めてのコム デ ギャルソンのショーのためのオリジナル曲が披露された際に終わってすぐにバックステージに来て、その場で依頼されたのだった。
NO. | Title | Artist | Arthor 作詞/作曲 | JASRAC作品コード | |
1 | Bar del Mattatoio | Seigen Ono | Seigen Ono | 0J2-5837-1 | |
2 | I Am a Good Fish | Seigen Ono | Seigen Ono | 029-0916-2 | |
3 | Monica Tornera Domenica Sera | Seigen Ono | Seigen Ono | 0M3-7035-0 | |
4 | Suzuki-Sensei-Sansei | Seigen Ono | Seigen Ono | 012-5608-4 | |
5 | Fernando de Noronha | Seigen Ono | Seigen Ono | 029-0913-8 | |
6 | I Do Love You a Little | Seigen Ono | Seigen Ono | 0I3-3023-2 | |
7 | Gol de Placa | Seigen Ono | Matinas Suzuki / Seigen Ono | 029-0915-4 | |
8 | Reached Moon Tower | Seigen Ono | Seigen Ono | 029-0903-1 | |
9 | Nick & Kiriko | Seigen Ono | Seigen Ono | 029-0905-7 | |
10 | Genova | Seigen Ono | Seigen Ono | 029-0914-6 | |
11 | It’s So Far to Go | Seigen Ono | Seigen Ono | 0J2-5842-7 | |
12 | Covenant of the Rainbow | Seigen Ono | Seigen Ono | 005-4589-9 | |
13 | Vida Boa | Seigen Ono | Seigen Ono | 029-0904-9 |