Le petit Ballet Rolly

Le petit Ballet Rolly

let des Rolly
 

 
World première - at 42nd Montreux Jazz Festival
 
Venue: Petit Palais at Montreux Palace - 18th July 2008 - 3PM to 7PM (program A/B/C/D every hour)
 
 
Webページ: https://saidera.jpn.org/

 

『Le petit ballet des Rolly』
モントルー・ジャズ ・ フェスティバル 2008 リポート
 

念のため Rolly とは

 すばしっこくクルクルと、2つのホイール(車輪)で動き廻る。2つのアームも別々に開いたり閉じたり、ショルダー(肩)部分から廻ったりする。ホイール外側の2本のサイドランプ(イルミネーションのリング)が美しく光る。2つの小さなスピーカーが付いている。もちろんアンプもリチウムイオン・バッテリーも 1GB メモリーも Bluetooth も搭載。 ATRAC/MP3/AAC フォーマットのオーディオ・プレーヤーでもある 。 最近は家電店やテレビでも見られる 。 8 月末ベルリンでの世界最大のコンシューマー・エレクトロニクス展 「IFA2008」でもRolly は好評であったとのこと。 10 月頃からはヨーロッパにも登場するとのこと 。さらに 9 月7〜8日には、早くも「Le petit ballet des Rolly」再演!ジュネーブ(スイス)です。 Rolly は日本人にしか発想できないようなプロダクツでありながら、日本やアメリカよりまずヨーロッパで人気が出るのかもしれない。とにかく「かわいい」「チャーム」なのである。
 

Rolly Special Party 

 2007年9月11日、目黒にある小さなホテル「CLASKA」、私がRollyを初めてみたのはここ。事前に何のインフォメーションもなく、その全フロアを使って「Rolly Special Party」があった。第一印象は「かわいい!」ほとんどの人が言う意見。「以外とすばしっこいじゃないか!」「いっぱい並べてバレエやらせたら面白いんじゃないか!?」「音はパーティー向きではないが複数使えば…」というわけで、Rollyをたくさん集めて各パートを発見しながら、バレエをやるという、スペックをよく知らないからこそ発想できるアイディアが浮かんだ。その席で今野敏博さん(レーベル・モバイル代表執行役社長。CBSソニーで南佳孝さんを担当されていた時以来)に久しぶりに会えて、「ソニー」の岸治彦さんをご紹介いただいたのは1年後の今となっては、必然性のある偶然であった。「えっ?これってオーディオ事業部のプロダクツなんですか」
 

Le petit ballet des Rolly 

 バレエ企画はひそかに進み始めた。急展開したのは、今年2月14日。南麻布にあるスイス大使館で、モントルー・ジャズ・フェスティバル(以下MJF)のディレクター、創始者クロード・ノブスさんが「Montreux Jazz Cocktail」というVIPパーティーに来日したときだった。今はどんなプロジェクトをやっているのか?を尋ねられたので「これ、音を再生しながらクルクル動くRollyを20個使って、クラシックバレエのように優雅に踊らせるんです」とひとつを見せた。彼はそのパーティーの席で、7月のMJFではこのRollyのバレエのワールド・プレミアを行いますと発表してしまったのだ。私もその場で簡単なプレゼンをするはめになり、つまりRollyにバレエを踊らせる「Le petit ballet des Rolly」は、プロダクツ自体の海外発表よりはるかに先行して、東京のソニーからの機材サポートにより、ひっそりと(と言っても結果的にジャーナリスト向けの)ヨーロッパ・デビューすることとなった。その後のやりとり、 ベニューやスケジュールいろいろな制約から 20 個は 10 個に変更し、 MJF始まって以来の特設ミニシアター (舞台の幅216cm、奥行き76cm、つまり B 全ポスター 2 枚を横並べした面積)が登場することとなった 。
 

Rollyは、楽器のように音が出る

 「SONOMA」でスーパーオーディオCDやサラウンドのレコーディングばかりやっていた私にRollyはとても新鮮に見えた。オーディオ機器には違いない。パーティー会場では、まわりの音がうるさすぎて、最初はRollyから音が出ていることに気がづかなかった。これを「高音質」か「いい/悪い」とか音質は評価の対象外だった。だいたい音源がすばしっこく移動するのである。クルクル廻るとLeslieスピーカーのように音が揺れる。Rollyのスピーカーは小さい。小さい口径のスピーカーはストロークを長く取らない限り低音は出ない。重低音やキックのような音は、5.1chに振り分けて、このスピーカーに得意な楽器(周波数帯域)のみを受け持たせればよい。
 
 バイオリンはソロでは、音量は充分ではないこともあるが、10挺のセクションになるとオーケストラのパートとして成り立つ。10個のRollyのひとつひとつが発音源である。これだけで20チャンネル。音量はこうして稼げる。このバレエでは、SA-CDの5.1chマルチチャンネルと音場支援のサラウンドのリヴァーブも加えたプログラムでは、25.1chマルチチャンネル・サラウンドの常に変化する音場を想定している。
 
 Rollyのバレエでは楽器(移動するミュージシャン)のアンサンブルに囲まれたのに近い音場になる。ひとつずつが別々のパートを発音するので濁らない。疑似ではなく、スタジオやホームシアターではとても体験できない(ミニ)劇場としての楽しさがここにある。それぞれが発音源であるという意味は、1曲を10個のRolly=20チャンネルで再生することで、その40個のオーディオファイルを作成するに当たっては、「Pro Tools」を使用した。96kHzですべての録音をしたのちに、それを20のグループにステムミックスを仕上げる。舞台の一番外側に配置されるRollyにリヴァーブ成分をアサインすると、ダイレクト音が中央部のRollyから発音され、それが広がりを持って、あたかも舞台全体が、発音体となっているように聴こえる。オーケストラであれば、演奏中に楽器の上下の位置が入れ替わることはほぼないが、このRollyのバレエの場合は、振付けにより移動、すれ違いなどをしていくうちに、音源の定位置というのはあまり意味がなくなってくる。さらに例えば、メロディ部分を発音している個体が、踊り方もプリマであるというルールはない。10個のオーディオファイルと10個のモーションファイルがマトリックスを組んだ状態でひとつのプログラムが構成されている。観客は一度に10〜15人を想定していたが、次の回を待たせるわけにはいかず、多く入場してもらったので、ステージの上手と下手から舞台内部を狙ったガンマイク「Sennheiser MKH416」をフロントのL・C・Rにアサインしたのは、音量を稼ぐのに非常に有効であった。サラウンドのL・Rはサラウンドリヴァーブのみ。
 

Rollyは、クルクル廻る!

 音楽に合わせて踊らせるには3つのモードがある。「セルフモーション」は、Rollyが本体内で曲解析して動く。「おまかせオートモーション」は、PCに『Motion Editor』ソフトをインストールして、オートモーション・ボタンをクリックすると、楽曲のファイルから12音解析技術、ビート解析技を使用して、ホイール、ショルダー、アーム、サイドランプの点灯や色を自動的に作り出す。クリックする度に(おそらく5種類ほど)異なるモーションを作成してくれるので、気に入った名前をつけて保存したり、さらにマニュアルで編集をしたりできる。「カスタムモーション」は、まさに最初からマニュアルで、すべての動きや、サイドランプを自分でデザインすることができる。「Le petit baller des Rolly」では、4つのプログラムそぞれぞれに10台分の「カスタムモーション」で作ったモーションが入れてある。これはかなり大変な作業であることはご想像いただけるであろうか?我々は40個のモーションファイルを作成したのである。Rollyのモーションに興味ある方は、無料でダウンロードできる『Motion Editorお試し版』をどうぞ。画面上でまず1台を動かしてみることができる。
 

Rolly は、HIP-HOP は得意

 「セルフモーション 」 と「おまかせオートモーション 」 では、音楽波形からリズムを検出して動きを生成していくので、逆にはっきりとしたビートのない、クラシックやバラッドの曲では、動きは際立ってこない。 HIP-HOP や J-POP のように均等ではっきりとしたリズム、大きく弧度展開していく楽曲では、なかなかそれらしい。 HIP-HOP なんか人間がまねしたくなるような(そのもとのネタは人間が組み込んでいるわけだが)動きが生成、組み合わされてくる。しかもさすが機械で、タイミングばっちりで踊る。 クルクル廻りながら踊るHIP-HOPこそがRolly の王道ダンスである。
 それを踏まえた上で、敢えて「こんなにすばしっこく動けるのなら、アンダンテやルパートの楽曲でも、そよ風になぴくシルクのスカーフのように、スムーズで、優雅な振付けが付けられるはずである」ということは確信していた。ただしこれはタイミング 、動きのスピード、グラデーション、そのすべてが 「カスタムモーション」でやることが前提であるが。
 

Rolly は、光る!

もっとも特異なポイントとして、 Rollyの2つのサイドランプが光ることが挙げられる 。 「Le petit baller des Rolly」には最低条件として 「部屋を暗転できること/静かな空間であること」がある。地灯りや軽いスポット照明と共に、サイドランプにより、音と動きにさらに次元を加えた表現ができる。静止画像でもシャッター速度により流れるように写る。カラーパレットから選んだり、RGBの割合で、グラデーションで変化させたり、虹のフラッシュを点滅させたりと好きな色を作り出すことさえできる。白黒の誌面では質感が判らないかもしれないが、ネット上でも動画も見れるので確認いただきたい。
 

10台スターター

 今回、最初に考えたのが10台をまったくディレイなく同時にスタートさせる道具である。大きな道具や仕掛けを使うことでも知られる、ユニークな現代ダンス?カンパニー「パパ・タラフマラ」の舞台監督、本人も役者で黒テント出身のベテラン、菊地さんと一緒にデザインしたのが、スターターである。スポンジとかネジ、これぞアナログの極みで、0.5mmの隙間で10台のスイッチを同時に「カチッ」とスタートできる道具を作ってもらった。特注品を工作する予算も時間もないので、簡単に入手できる既成のサイズの角材やB2サイズのパネルといったもので、仕上げは「つや消しの黒」である。観客に一番舞台芸術っぽいイメージを与えたのは、このスターターであった。スタートボタンを押してから60秒以内に、そのプログラムの板付き位置(スタートポイント)に10台のRollyを限りなく精密にセットする。このセッティングが甘いとすべて台無し。このスターターを押す瞬間には観客にも緊張感が走る。そして4種類、それぞれ約6分間のマジカルなプログラムがスタートする。
 
 Rollyには、Bluetoothが付いており、パソコンや携帯電話と無線接続して、データをやりとりしたり、Bluetooth付きの携帯電話やウォークマンからワイヤレス・スピーカーとしても使用できる。これからは何でもワイヤレスでつながる。
 

子どもに与える影響

 そのかわいさは、子どもにもストレートに伝わる。ある日、4つのRollyを子どもバレエ教室に持って行った。くるくる廻り出すともう子どもたちも親も釘付け。子どもたちの視点からはこれはオーディオ・プレーヤーという認識はない。ロボットでもない。インタラクティブではないし、もちろんペットでもない。動きと音、その両方あることが子どもたちをがっちり掴んでいる。「面白い?」と聞くと、必ず「欲しい」と言う。親たちも「どこで購入できるのか?いくらなのか?」は必ず出る質問で、1万円台なら子どものプレゼントにすぐ買いたいと。4万円弱は子どもたちに与えるおもちゃにしては、間違って壊されたときに痛い。
 
 『Motion Editor』を使用して、振付けをしてみようというのは、ダンスが好きな人に限られると思うが、(最初はかなり面倒であるが)これにはまると無意識のうちに「空間認識能力」「微分積分の概念」が養われる。であろうと思われる。仮に小学生であっても。
 
 我々は10台分の振付けを創るときに、最初に10分の1スケールの座標で設計図を作った。最初の立ち位置、曲のパートで10台がどのように展開していくか、移動する軌跡が判るように。すると楽曲のテンポ=「時間軸」と、Rollyの「移動速度」(=左右のホイールの前後方向への回転スピード)という2つのパラメーターを同時に、計算?(というよりカット&トライですが)していかないと「移動距離」が算出されない。思い通りのテンポ(時間=拍数)で思い通りの位置に移動させるには、移動距離が必要である。A点から B点に例えば2 小節(仮に5秒)で移動するには、①2拍で素早く移動して6拍待機している。②8拍でちょうど到達するように速度を調節する。 ③最初ゆっくり最後につじつま合わせで素早く移動する。など、いろいろできる。 『Morion Editor』には時間軸 (X軸方向、音楽波形も)とホイールの速度 (Y軸方向)は出るのだが、その積を移動距離として数値表示はされないので (1 台でやるには必要ないか)、時間軸と速度軸に囲まれた面積が移動距離になる。
 
 小中学生のお子息をお持ちの方、ダンスや音楽は好きなんだけど、どうも算数が苦手だという場合は、 Rolly をプレゼントして 『Motion Editor』で「いっしょに」遊んでみましょう 。 タブン、物理や数学が得意な子どもに育てられますよ!体育もさぼらないようにお願いします。
 

身体表現、PC画面上ではなく

 実際に自分の身体を動かしながら、動きを作る。今回、Rollyでバレエをやるにあたっては、現役のバレリーナ兼教師にも入ってもらっている。Rollyバレエの振付けというのは、PC画面上だけではぎこちない。実機では、その見た目の大きさの割に、ややずっしりくる300gの重さがあり、直進して止まっても、スピードを変化させても、回転しても、すべてに慣性の法則が働き、みごとにその影響を受ける。ホイールは床とスリップするし、片側だけアームを上げれば重心がずれるし、画面上ではまったく見えないが、実機に移行してはじめて確認できる、物理的に複雑な計算により修正(カット&トライ)できる誤差が生じてくる。バレリーナが踊るときには、人間ですから無意識のうちにすごい修正をしているんですね。ロボットなんかまだまだです。音楽もMP3やCDではまったく本物にある領域が入らないではないか。
 舞台芸術をデザインするときには、やはり照明や演出すべて含めて、PC画面上ではなく、現場で動かしてみることが非常に重要である。特に俯瞰でみたイメージや、真正面ではなく、少し離れたところから、無意識に観たり聞いたりしているうちに思いつくアイディアや発見というのはPC画面上ではできないと断言できる。もちろん現実には見えないが、PCだからこそ見えるイメージもありますよ。スタジオにこもって音楽制作もDAWで何でもできると思ってる人も、もう一度原点に戻り、ライヴに出かけてみるとか、できれば一生のうち一度くらいは、スイスへ、MJFにも行ってみることを強く薦めます。
 

Rollyには

 目にあたるセンサーやGPSのような位置認識をする機能はない。どの方向にどれだけ進むか、曲がるかは、モーションファイルに書き込まれたとおりであるが、そこに前述した誤差が加わってくる。台風の進路予測のようなもので、異動距離、回転させた角度、時間経過とともに誤差は加算されてくるので、例えば4小節後の位置予測と32小節後の位置予測では、後者の方が大きな円で描くことになる。そのほぼ中心に来てくれることもあるが、大きくずれていることもある。もっともかわいい動作「クルクル」なんかしようものなら、次に進む方向はおおよその目安にしかならない。
 
 従って4つのプログラムとも、ステージから落ちないこと、互いにぶつからないこと、などを考慮しながら振付けをデザインする。種明かししたくないが、前半は、ホイールでの移動は極力さけることになり、「クルクル」は楽曲の後半に持ってくることが必然的に多くなる。直進で前後に移動する分にはそれほどずれることはない。カーブや回転が鬼門である。それでも2~3回に一度は10台のRollyの動きがまったくもってデザイン通り、ぶつからず、ステージからはみ出さずという完ぺきなバレエを見られる。複雑な振付けをするほど、このリスクは高くなるが、デジタル機器で、工業製品であるのに、このドキドキ感が、Rollyのバレエから人間味を感じるチャームポイントでもある。10個にシンクロさせた振りを付けているのに、新人とベテランのような個性(個体差ではなく、スリップの具合や角度がほんのわずかにずれ込んでくる部分)が出るのが、かわいい。
 
自動車メーカーの進化したロボットはまったくもって一糸乱れず、社会主義の軍隊の行進というか、いかにもコンピューターというか機械そのもので、観ていて何も芸術的なものを感じない。
 

モントルー・ジャズ・フェスティバルとクロード・ノブス氏

 ノブスさんはRollyをたいへんお気に入りいただいた様子で、ストラヴィンスキー・ホールのメインアクトの前のMCでも毎晩のように披露してくれた。42年前にモントルー市が観光客の誘致戦略として始まったMJFは、ジャズへの情熱と発展的継続により、今ではスイスの代名詞とも言えるプレミアクラスのイベントとなり、そこからいくつもの歴史的名演も生まれている。一度出演したアーティストは必ず戻ってくる。なるほど、その理由は(誌面では伝えられませんが)、一度でも実際に行けば解ります。名盤『お城のビル・エヴァンス』1968年、エディ・ゴメスのヨーロッパ・デビュー、ジャック・ディジョネットとのトリオはあまりに有名。今年のトリはなんと「ディープ・パープル」であった!「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は、レマン湖のほとりMJFメイン会場のカジノが火事になった時の実話。歌詞にある「ファンキー・クロード」はノブスさんのことである。「ジャズ」と言っても60〜70年代と現在では社会背景も違い過ぎるわけで、そこにクラシックやDJなんかが入ってきたっていいじゃないか。
 
 音楽をカテゴライズ、ジャンル分けすることは商業主義で、意味がない(と私は考える)。伝統的で、落ち着きのあるスイスでは、ジャズもロックもクラシックもオーディエンスが分裂してしまうことはない。そこに集まるラグジュアリークラスの人々は、ごく自然体で人生を楽しんでいる。生演奏で心から何かを伝えようとする、コミュニケーションこそがジャズ、あるいは、ジャズ・フェスの精神である。CD というパッケージは売れなくなる一方で、日本でもフェスティバルの動員人数は増えたが、記憶に残る名演はどのくらい生まれているのであろうか?
 
 ちなみに私自身は、MJFには1986年、アントン・フィアー(ds)の「ゴールデン・パロミノス」ヨーロッパツアーのPAエンジニアとして訪れたのが最初だった。メンバーには、REMのマイケル・スタイプ(vo)、シド・ストロー(vo)、ジャック・ブルース(b)、バーニー・ウォレル(org)、リチャード・トンプソン(gt)、他のスーパーバンドで、そのときにはカジノ(現在使用されていないが最も伝統的な会場)に出演した渡辺貞夫さんグループのPAも担当した。1991年にはクインシー・ジョーンズ指揮のマイルス・デイビス、スティング、エルビス・コステロ他のハイビジョン映像用のミキシングを担当させてもらった。そんな縁からノブスさんは、ヨーロッパではまったく知られていない私自身の(エンジニアではなく)演奏活動としてのテープ(そののち「Bar del Mattatoio/Seigen Ono」になるラフミックス。ライナーノートはカエターノ・ヴェローゾ)を聞いてもらえる機会があり、なんとレコーディングに参加している7カ国にまたがるミュージシャンをMJFに集めてアンサンブルとしてデビューというチャンスをくれた。しかも93年のステージが終了したその場で、翌年も招待してくれた。ステージにブラジリアン・バーを作り、ライヴの最後ではノブスさんはダンサーとスロータンゴを踊っていた。そのライヴは「Seigen Ono Ensemble Montreux 93/94」となった。
 
 マイルス・デイビスもクインシーもディープ・パープルも渡辺貞夫さん(7回出演)も、ノブスさんは世界中のミュージシャンと特別な信頼関係にある。彼のまわりでは日常的に想定外のサプライズが起こる。ゲネプロはなし、結果がすべてであり、現場がいつもインプロヴィゼーションであるのもジャズ・スピリッツである。冒頭でふれたRollyの本質、とにかく「かわいい」「チャーム」なことに彼が瞬時に反応したことから、「Le petit balletdes Rolly」がMJF出演なのだから、世の中、何がどうチャンスに結びつくか判らない。モンテカルロ・バレエ団の芸術監督ジャン・クリストフ・マイヨーも同じ。ヨーロッパの芸術家たちは、スペックやマーケティング戦略では反応しない。過去の分析や紙に書かれた計画ではなく、本質を瞬時に見抜き、プロジェクトを有言実行できるかにかかる。
 
 ソニーの野口不二夫さん、岸さん、瀬名さんほか関係者のみなさま、モントルー・サウンズ エンタテイメントの酒井捷八さん、バレエ制作にご協力いただいた全スタッフ、ミュージシャンに誌面ですが謝辞を申し上げます。

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