CDG Fragmentation
Seigen Ono 

COGB-108 / COJA-9351
  CD / SACD   RECORD
 

CD/SACD
01. CDG Fragmentation (In other words) /ということ
02. CDG Fragmentation (I was slightly surprised) /おどろいたね
03. CDG Fragmentation (You know as I expected) /やっぱりね
04. CDG Fragmentation (It's kind of good) /まあまあね
05. CDG Fragmentation (It's up to you) /よきにはからえ
06. WHITE TANGO (document 1997)  /ホワイト・タンゴ (ドキュメント 1997)
07. Goto Cu Niro  /ゴート・ク・ニーロ
08. MALU (Seigen Ono Plus at Osaka 2003)  /マルー (セイゲン・オノ・プラス アット大阪 2003)
09. Jean from 3rd street   /三丁目のジャン
10. At long last  /あげくの果て
11. John from 3rd street  /三丁目のジョン
12. Tu es né en quelle année? /何年生まれ?
13. It's your imagination /きのせい
14. WHITE TANGO /ホワイト・タンゴ
 
LP Side-1
01. WHITE TANGO /ホワイト・タンゴ
02. Goto Cu Niro  /ゴート・ク・ニーロ
03. It's your imagination /きのせい
04. 
John from 3rd street  /三丁目のジョン
05. CDG Fragmentation (In other words)  /ということ
06. CDG Fragmentation (I was slightly surprised) /おどろいたね
LP-Side-2
01. Tu es né en quelle année? /何年生まれ?
02. 
MALU (Seigen Ono Plus at Osaka 2003)  /マルー (セイゲン・オノ・プラス アット大阪 2003)
03. 
At long last  /あげくの果て
04. Jean from 3rd street   /三丁目のジャン
05. CDG Fragmentation (You know as I expected) /やっぱりね
MUSICIAN:

【参加ミュージシャン】
オノ セイゲン、ナナ・ヴァスコンセロス、アート・リンゼイ、マーク・リボウ、ジョアン・パライバ、クバ・ヴィエンツェク、coba、緑川英徳、十亀正司、山岡秀明、ネッド・ローゼンバーグ、ほか
 
CDG Fragmentation (In other words)

 CDG Fragmentation (I was slightly surprised)

 CDG Fragmentation (You know as I expected)

 CDG Fragmentation (It's kind of good)

 CDG Fragmentation (It's up to you
 

WHITE TANGO (document 1997)
Masashi Togame : Clarinet / Hideaki Yamaoka : Accordion / Masataka Matsumoto : Tuba / Motoyoshi Furuya : Trumpet / Mariko Okamoto : Percussion / Yuka Matsunuma : Viola / Pearl Alexander : Contrabass

Goto Cu Niro

Naná Vasconcelos : Percussions / Pearl Alexander : Contrabass


MALU (Seigen Ono Plus at Osaka 2003)

Joao Parahyba : Percussion / Coba : Accordion / Hidenori Midorikawa : Alto Sax / Seigen Ono : Guitar


Jean from 3rd street

Jane Scarpantoni : Cello / Marc Ribot : Guitar / Arto Lindsay : Guitar / Naná Vasconcelos : Percussion / Ned Rothenberg : Bass Clarinet / Sussan Deyhim : Steps / Michael Blair : Percussion / Seigen Ono : Piano


At long last

Kuba Więcek : Alto Sax  / Pearl Alexander /Contrabass / Seigen Ono : Piano


John from 3rd street

Marc Ribot : Guitar / Arto Lindsay : Voice and Guitar / Keiko Courdy : Voice / Ned Rothenberg : Reeds
 

Tu es né en quelle année?

featuring Estelle Bauer : Voice / Joao Parahyba : Percussion / Hidenori Midorikawa : Alto Sax / Coba : Accordion / Seigen Ono : Guitar
 

It's your imagination

Marc Ribot / Guitar : Arto Lindsay : Guitar / Michael Blair : Percussion / John Zorn : Alto Sax / Amanda K Miller : Steps / Seigen Ono : Piano
 

WHITE TANGO

Masashi Togame : Clarinet / Hideaki Yamaoka : Accordion / Masataka Matsumoto : Tuba / Motoyoshi Furuya : Trumpet / Mariko Okamoto : Percussion / Yuka Matsunuma : Viola / Pearl Alexander : Contrabass

 オノ セイゲンの前作『Memories of primitive man』は私にとって驚愕の体験だった。今回のCDでも弾いているコントラバスのアレクサンダー・パールをフィーチャーしたこのアルバムは、いわば音のインスタレーションとてもいうべきものだった。広い空間のあっちやこっちに不思議な形をした音のオブジェが置いてある。いろいろな形をしたコントラバスの音型。いろいろな角度から撮影したアマゾンの森の音の風景。ギターやパーカッションの音の断片もある。いろいろな「形」が見える。聴き手はそれらの間をきままに散歩する。あれに近寄ってちょっと触ってみて、別のものに惹かれて少し移動して、そっちも触ってみる・・・。それはいわば「サウンド美術館散歩」のような経験だった。ここでは様々な「音楽」が「音」に断片化されて、「音楽ではないサウンド」(靴音とか森の音風景とか)とコラージュされているのだけれど、それらが全部「かたち」をしているのだ。聴くだけでなく、見て触れる「音」。レゴを組み立てるみたいに、これらの断片を自分で組み合わせて、別の「かたち」を作りたくなる。そんなアルバムだった。
そして今回の、いみじくも『断片=フラグメンテーション』と題されたアルバムである。チャプター1~6はオノ セイゲンがサウンドデザインを担当した「音楽の伴奏はないファッションショー」の模様を録音し編纂したもの、そしてチャプター7以後は基本的にこのショーのために用意した「音楽」(これらを実際のショーでは断片として用いたのだろう)がベースになっているのだという。もちろんこれらの中には普通の「音楽」も含まれている(どれも素晴らしく瑞々しい)。だが「音楽」ではなく「音」が、このアルバムの主役であるのは確かだ。
拍手、靴の音、カメラのカチャカチャいう音、楽器をイレギュラーに擦る音 ―― 「物音」がどれだけ人の想像力を膨らませてくれるかを、このアルバムは思い出させてくれる。眼は遠くからでも対象を正確に認識できる。「あ、あいつだ」「あ、あれだ」と。目の認識はとても即物的だ。想像力が膨らまない。しかし目をふさがれて音だけを聴かされると、私たちは不安とときめきがないまぜになったような、不可思議で空間の中に沈んでいく。ギー・・・ぽちゃん・・・カチャカ・・・パチ ―― 一体どこでどんな姿をした誰が何のためにこの音をたてているんだろう? ここはどこなんだろう?
このアルバムからはいろいろな物語が想像できる。例えば ―― ここは音の小さな美術館だ。最初の場面はエントランスホール(チャプター1-6)。ミュージシャンたちが一人一人と入ってくる。そのたびに観客から拍手が起きる。ミュージシャンたちは少し音出しをしたり、セッティングをしたりしている。そして全員がそろったところで最初のナンバー(チャプター6)。これが終わると彼らは美術館の個々の部屋へ分かれて行く。この部屋ではラテン風、あの部屋では前衛音楽風、そちらでは民族音楽風などが演奏される。部屋ごとに別のサウンドが展示されているのだ。そして私たちはこれらの個室を気ままにプロムナードする ―― こんな物語を想像したくなる。
このアルバムの何が面白いかといって、「音楽」と「音」とのぎりぎりのラインを、縫うようにして自由自在に回遊できることだ。ケージが力説したように、私たちはいつもありとあらゆる「音」に囲まれて生きている。にもかかわらず私たちの耳は、自分が欲しい音の情報だけを拾って世界を聴いている。コンサートでは「音楽」だけを拾って、客の咳払いや物音は全部捨象する。しかし「音楽」とは実は無数の「音=ノイズ」という「地」から浮き上がってくる「図柄」だ。豊かな「地」なくして音楽はありえない。
聞こえているのだが全然聴いていないもの、見えているのに「ある」とは夢にも思っていないもの、そういうものがたぶんいっぱいある。私たちはふだん自分が聴こうと思っている「図」ばかりを追って、背景の「地」 ―― 本当は聞こえているのにもかかわらず ―― にはまったく気づいていない。私たちの日常生活はこうした単なる「再確認行為」だけから積み上げられている。だが実は、この再確認行為ではスルーされている「地」のかすかなノイズやにじみや埃こそが、私たちの音楽体験をリアルなものにしているのではないか。
このアルバムを聴きながら私は、ゴダールの自伝映画のある場面を思い出した。『JLG/自画像』に、単なる背景のはずの書斎の本棚が、家政婦が掃除している最中にいきなりびりびりと勝手に震動し始める場面が出てくるのだ。ポートレートの背景の本棚など本来は、そこから人生という「図」が浮き上がってくる単なる「地」にすぎないはずだ。それがまるで超常現象のように震動し人生の物語を語り始めるのである。そしてこのアルバムの音たちもまた、人の意識の底に眠っている無数の物語を語ってくれるだろう。
 
岡田暁生(おかだあけお) 京都大学人文科学研究所教授(音楽史)


 
★ インタヴュー・文=松山晋也 ★ 
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コムデギャルソン × オノ セイゲン
革命はいかにして起こったのか

 


NO.   Title Artist Arthor 作詞/作曲 作品コード
1   CDG Fragmentation (In other words) Seigen Ono Seigen Ono  252-3893-1
2   CDG Fragmentation (I was slightly surprised) Seigen Ono Seigen Ono 252-3894-9
3   CDG Fragmentation (You know as I expected) Seigen Ono Seigen Ono  252-3895-7
4   CDG Fragmentation (It's kind of good) Seigen Ono Seigen Ono 252-3902-3
5   CDG Fragmentation (It's up to you) Seigen Ono Seigen Ono  252-3903-1
6   WHITE TANGO (document 1997)  Seigen Ono Seigen Ono  
7   Goto Cu Niro Seigen Ono Seigen Ono 252-3661-0
8   MALU (Seigen Ono Plus at Osaka 2003)  Seigen Ono Seigen Ono  
9   Jean from 3rd street  Seigen Ono Seigen Ono  252-3675-0
10   At long last  Seigen Ono Seigen Ono 252-3674-1
11   John from 3rd street Seigen Ono Seigen Ono 252-3663-6
12   Tu es né en quelle année?  Seigen Ono Seigen Ono   
13   It's your imagination Seigen Ono Seigen Ono 252-3662-8
14   WHITE TANGO Seigen Ono Seigen Ono  058-7123-9